2019年に中国の武漢で初の症例が確認されてから現在に至るまで猛威を震い続けているCOVID-19。
2023年1月時点で全世界の感染者数は6.7億人、死亡者数は680万人となっており、多くの国と地域に影響を与えています。
最近になり中国ではゼロコロナ政策の緩和が話題になったり、日本でも来年の5月から感染症法状の扱いを季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げることが決定したりと、コロナに対しての対策は国レベルでは緩和の方向になっています。
そのような状況から新型コロナウイルスはもう怖くない!とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしまだまだCOVID-19に対する対策は必要な状況です。今回は新型コロナウイルスの規制緩和の背景を見ていきながら、対策が必要な理由や感染の疑いがある場合にどうやって検査を受けるのかを解説していきます。
COVID-19の感染対策が緩和された背景は?
これはCOVID-19の重症化率や死亡率の変化が理由にあります。
SARS-CoV2のデルタ株が流行していた2021年7月における死亡率をみてみる60-64歳の致死率は0.33%、65-69歳で1.07%、70-79歳は1.65%、と1%前後となっています。(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000826597.pdf)これが80-89歳になると4.62%、90歳以上になると5.64%と大きく上昇します。
このデータを見てみると、若年者にとっては確かにただの風邪で、重症かもあまりせず感染しても気づかない人がいる一方で、80歳以上の高齢者に感染するとその5%が死亡するという非常に危険なウイルスだったのです。当然死亡する前には重症化するので、さらに多くの人が高度医療機関の病床に入ることになります。そうするとCOVID-19の患者で集中治療室が満床になり他の疾患の重症者が病院に入れなくなり死亡してしまうという事態も起こります。
このような状況ではある程度厳しい感染対策を行わなければいけなくなります。
令和3年の7-8月の統計を見てみると80歳以上の重症化率は1.86%、致死率は1.69と大幅に低下しています。これは季節性インフルエンザ(いわゆる普通のインフルエンザ)と同等の数値です。(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001027743.pdf)
COVID-19の重症化率が低下したのにはいくつかの背景があります。まず集団免疫の獲得です。集団免疫とは、人口の一定割合以上の人が免疫を持ったために感染者がでても他の人に感染しにくくなった状態です。集団免疫を獲得すると感染症は流行しにくくなります。
COVID-19の罹患者が増えたことや、予防接種をした人が増えたことで集団免疫を獲得したものと考えられます。
またCOVID-19の変異によってウイルスが弱毒化してきている可能性も指摘されており、それも重症化率の低下に寄与しているものと考えられます。
ここまで読まれた方は「じゃあもうコロナは怖くないのか」と思われるかもしれません。しかし油断していると大きな損害を生じる可能性があります。次の項目からは重症化率が下がっても感染対策が必要な理由について解説していきます。
重症化率が低下しても対策は必要な理由① 以前高水準の死亡者数
ここまで重症化率の低下とそれに伴い国レベルでの対策の緩和が行われていることについて触れてきました。そうなると、もうCOVID-19は怖くないだろうと思われる方が多いでしょう。しかし、まだ全くもって油断できないのが現状です。
2023年12月ごろからはじまった第8波では、2022年12月1日から2023年1月21日までの間に1万5399人もの死者が出ているのです。
https://covid19.mhlw.go.jp/?lang=ja
日本感染者とワクチン接種者は合計すると人口の70%をカバーしています。集団免疫は十分に獲得できていると言っても良いでしょう。第8波で流行しているオミクロン株が従来のものと比べて重症化しているという報告もありません。それにもかかわらずこれほどの死者がでているのです。一体なぜなのでしょうか。
まず現在流行しているオミクロン株の感染力の問題があります。現在流行しているオミクロン株の感染力は非常に高いことが知られています。第7波の時と異なり現在は全数把握はされていません。つまり現在出されている統計は感染者数の実態の把握には役に立ちません。発表されている数よりもっと多い感染者が日本国内に存在しているのです。さらに感染者の重症化率が減ると無症状の感染者も増えることからより多くの人に伝播させてしまう可能性があります。
死亡率は低かったとしても、感染者数が大きく増えるとその分死亡者は増えていきます。
とくに第8波では死亡者の多くが高齢者です。
もともと衰弱傾向にあったり、基礎疾患を持つリスクの高い高齢者が多く存在するような介護施設などで、クラスターが発生すると多くの死者がでるのです。
以前の毒性の強い株が主流の時はCOVID-19で肺炎を起こしてそれによって死亡する事例がおおかったのですが、今のコロナ死はCOVID-19によって全身状態が悪化してそれにより衰弱が進んで死亡のきっかけになったり、元々持っている病気が悪化して死に至るというパターンが多くなっています。
COVID-19が流行することにより奪われる命はまだまだ多いのです。国民一人一人が感染対策を意識することで非常に多くの命が救われることになるのです。
重症化率が低下しても対策が必要な理由②
若い人だと「でも自分は重症化しないし大丈夫」とお考えの人もいらっしゃるかもしれません。実は重症化しなくてもCOVID-19に感染するデメリットは大きなものがあります。COVID-19の重症度は肺炎の有無で決まるのですが、肺炎を起こしていなくても発熱が高度で動けなくなったりして入院を要する場合があります。そのような症例では死亡数や重症化数にはカウントされません。しかし重い症状から救急搬送は必要となる例が後をたたないのです。総務省消防庁の統計では患者の搬送先が決まるまでに4件以上の病院に照会が必要になったケースなどを「搬送が困難な事例」としています。県庁所在地などの消防本部など全国52の消防機関の報告をもとに毎週取りまとめているのですが、1月15日までの1週間で8161件となっています。このうちCOVID−19が2340件と全体の3割近くを占めているのです。
COVID-19による搬送が多い状態ではCOVID-19以外の患者さんも搬送ができずに病状が悪化する可能性があるのです。
さらにCOVID -19感染後に後遺症を残す症例も多く、治癒した後も半年以上にわたって息切れや咳、味覚障害が残る症例も多数報告されています。また軽症例でも後遺症が残ったという報告も多数あり若いから感染してもなんの心配もないというのは大きな誤りだと言えます。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2776560
今だからこそ大切なPCR検査
COVID-19に感染しているかどうかはPCR検査で確認することができます。
いままで解説したように自分自体がCOVID-19に感染しても軽症で終わるという人は多くなっていますが、周りに感染させることのデメリットはまだまだ大きいものとなっています。重要なのは症状に気づいたらすぐに検査を受けて陽性であれば周りに感染させないための対策をとることが非常に重要になるのです。
ワクチン接種を受けているから必要ないのでは?という患者様もいらっしゃいます。ワクチンで確かに感染する確率を下げることができ、重症化率も確実に下がることは事実なのですが残念ながらワクチン接種後の感染例も数多く存在します。むしろ症状が出にくく気付きにくいということからよりPCR等の検査を行い早期に発見することが重要であるといえます。
PCR検査はどこで受ける?
現在PCR検査を受けられる場所は医療機関と衛生検査所が主になっています。
病院でも検査が受けられます。治療が必要な場合にはそちらの対応もすることができます。しかし一方でPCRを受けられるのは何らかの症状があり、医師が必要と判断した時ということになります。また、現在病院に受診する人が非常に増えていることから長い待ち時間が予想されます。その間に待合室で他のCOVID-19患者と接触したりそれ以外にも感染症のある患者と接触する可能性はあり得ます。
つまり病院でPCRを受けるのはある程度症状があり治療が必要な状況の人が適しているということになります。また高齢者や多くの基礎疾患をお持ちの方も病院でPCR検査を受けるのが良い場合があります。
衛生検査所は費用がかかりますが、病院での長い待ち時間が発生しないというのは大きなメリットです。またWEBで問診を行い郵送・バイク便・集配などで自宅や会社で検査を完結することができ、陰性証明もWEBで出力することができます。この利便性は大きなメリットと言えます。病院のように待合室で他の陽性患者と接触しないのも良い点です。
現在特に症状はないが高齢者に会う予定がありPCRを受けたい人
濃厚接触者には該当しないがCOVID -19患者が身近に発生して不安がある
わずかに症状があるが病院を受診するほどではない
海外旅行やイベント参加、出勤等の判断のためにPCRを受けたい人
このような人に衛生検査所での検査は非常にお勧めできるものとなっています。
https://miyalabopcr.com/
今回の記事のまとめ
今回の解説の要点をまとめてみましょう。
- COVID-19感染者の重症化率や死亡率は低下している。それにより国レベルではCOVID -19の感染対策は緩和傾向である。
- 重症化率が低下したとしても多数の感染者が出ているため油断はできない状況が今後も続いていく。
- 高齢者や基礎疾患を持っている人は依然として重症化や死亡のリスクが高く若い世代の感染対策は依然重要である。
- 若い人で重症化しなくても後遺症が残る可能性があるため若い人自身の感染対策も必要。
- PCR検査など精度の高い検査の重要性は今後しばらく高い状況が続く。必要な時にすぐに受けられるように周辺の検査ができる場所について情報を得ることが重要。
- PCRを受ける場所としては症状があったり重症化リスクが高く、検査で陽性であればすぐ治療が必要な人は病院が推奨される。症状がなく陰性証明などの感染の有無の確認が必要な人は衛生検査所での検査が感染リスクや利便性の観点から非常に有用である。
これからもPCR検査の重要性は増していきます。PCRが必要であると感じたりPCRについて疑問がある方はぜひお問い合わせください。